里山のツキノワグマ 6 〜ツキノワグマのグルメメニュー〜

 今日(R02.09.05)の新潟県魚沼地方は雨上がりの朝を迎えています。守門アメダス観測点における最低気温は20.2度、日中の最高気温は32度と予想されています。台風10号による影響が心配されますね。

 さて、今朝も愛用の小型四駆で出勤前の定点観察を行いましたが、守門岳の麓の里山エリア(エコミュージアムからは20kmほど離れています)で新鮮で見事な(やっぱり微妙な表現ですね・・)ツキノワグマのフンを発見しました。発見場所は県道敷の路肩白線の近くで、左右に河川と「標高500mほどの里山の森」を有する配置となっています。フンの状態から「たった今、ツキノワグマがフンを排出したばかり」という印象です(最寄りの人家までの距離は約1kmほど)。

 

<早朝の道路に新鮮なツキノワグマのフンを発見 周囲の安全を確認した後に採取します>

※フンの周囲に薮がある場所は特にツキノワグマへの警戒が必要です(丸腰状態は大変危険)

 

 早速このフンの内容物調査を行ったところ「細長い物体」が多数見つかりました。洗浄を進めてゆくとこの細長い物体は「フクラスズメなどの幼虫(毛虫)」であることが分かります。フクラスズメの幼虫はウワバミソウやイラクサ(日当たりの良い沢沿いに自生)などを食害するガ(蛾)の仲間ですが、数えてみると30体以上の幼虫が含まれています。そして何かの植物性の繊維質が多く含まれていますが、これはおそらく「フクラスズメの幼虫と、その食草であるウワバミソウなどを敢えて一緒に(効率的に)採食したもの」と思われます。このフンを評価すると、タンバク質や脂肪分、ビタミン、ミネラルに富んだバランスの良い食性です。フクラスズメに幼虫の他に、オニグルミの実(9月上旬まで採食することを実証)や堅果類が含まれています。こうしてツキノワグマのフンの内容物調査を行うと、里山のツキノワグマの食性が徐々に見えてきます。

 

<ツキノワグマのフンの内容物は「30体以上のフクラスズメの幼虫」や植物繊維、堅果類の外皮、オニグルミの外殻などです>

 

 一般に「人間が山を荒らしたから山にはクマのエサが無い」と言われますが、調査結果から見るとむしろ逆で、「昭和30年代の燃料革命以降成長を続ける里山(化石燃料への切替により伐採しなくなった旧薪炭林)の恵みを、ツキノワグマは巧みに食性に取り入れている」と思われます。集落近くの河畔林や里山(旧薪炭林)にはウワバミソウやイラクサ、オニグルミの群落(森)などが連続しています。新潟県魚沼地方の里山で行動するツキノワグマの食性は「里山のグルメメニュー」とも表現出来そうです。