里山のツキノワグマ 91 〜令和3年はブナの実が大豊作となる可能性あり〜

 今日(2021.04.13)の新潟県魚沼地方は穏やかな朝を迎えています。守門アメダス観測点における最低気温は4.8度、日中の最高気温は18度と予想されています。夜半には一雨降るかも知れませんが、この陽気と暖かい雨で山野の芽吹きも進むことでしょう。

 さて、ブナの花の開花状況については先週末の奥山でのラインセンサスの際にも言及しましたが、今朝の定点観察で「新潟県魚沼地方におけるブナの開花」を実感しました。調査対象木は未だ少ないものの、前回の奥山エリア(標高1,000m)のブナも、今朝確認した里山エリア(標高370m)のブナも「大量の花芽」をつけています

 調査対象木には「チアリーダーが持つボンボンのようなブナの花」が大量に咲いています。勿論ブナの一斉開花イコールブナの大量結実(豊作)ではありませんが、新潟県魚沼地方について「令和3年度はブナの実が大豊作」となる可能性が見えてきました

<各写真とも2021.04.13に魚沼市横根地区の標高370m付近で撮影>

 

 ブナの実が豊作となると、ブナの実を摂食する秋期のツキノワグマの栄養状態が著しく向上し、特にメスのクマの受精卵の着床率が高まりますので、結果として「翌春に生まれる子熊の数」と「親子熊の数」が増えることが想定されます更に、ブナの実の豊作年から2年後には「ツキノワグマの生息密度の上昇」と「ひとりだちした若熊」の人里や市街地への出没も懸念されますので、当方の気持ちも複雑です。ツキノワグマにはたっぷりと山の恵みを味わってほしいと思いますし、その一方では「決して人里や市街地には出てこないで」との思いも強まります。

 ブナの花の一輪一輪がツキノワグマの命に繋がっています。

 

 またブナの大量開花の翌年にはブナアオシャチホコ(蛾の一種)の幼虫が大量発生し、ブナの葉を大量に食害する現象が発生することがあります。こうしたブナの葉の食害について、ブナが結実のために大量のエネルギーを用いたことに起因する食害防御物質の枯渇が原因なのか、或いはブナが主体となり土中では分解されにくいブナの葉を「樹上でブナアオシャチホコの幼虫に食べてもらうこと」で「次の豊作年に向けて」ブナ林全体の腐食分解スピードの向上と土壌養分の回復に寄与させる効果を齎すのか、その機序は未だ解明されていないようですが興味深い現象ですね。

 

※参考:ドングリやブナの実の豊凶調整効果(マスティング)に関する記述はこちらです。

    前回のブナの実の豊作年(2018年)の顛末(秋に台風襲来)に関する記述はこちらです。

    ブナの大量開花とブナアオシャチホコ、クロカタビロオサムシに関する記述はこちらです。

<左上:イノシシが越冬した湿地 右上:今ではミズバショウが咲き誇っています>

<左下:道路の法面にはイノシシが摂食した形跡あり 右下:雪上に残るイノシシの足跡>

 

 そして、この定点観察地点ではニホンイノシシが10頭前後越冬したことが当方の調査で分かっています。イノシシは多産の哺乳類ですので、この春以降は更に頭数が増える可能性が高いと思われます。イノシシは田んぼや畑のすぐ近くを餌場としています。農作業や野外活動の際にはイノシシにも十分御注意下さい。