野イチゴの季節 〜戦後の燃料革命と里山の変化〜

 今日(R02.06.25)の新潟県魚沼地方ですが、雨は降っていないものの雲の量も多く、朝から梅雨前半の涼しい気候となっています。守門アメダス観測点における最低気温は18.6度、日中の最高気温は30度と予想されています。熱中症にも注意しましょう。

 

 さて、先日担当施設の芝刈りをしていた時のことですが、幼稚園から小学校低学年くらいの女の子数名がつかつかとこちらへ近づいてきました。機械を止めて「何だろう?」と思っていると、一人の少女が「あの〜、あっちの方のイチゴを切らないで下さい♪」と言ってきました。「破顔一笑」とはこういう時に使う言葉なのかなと思いますが、

「はい、わかりました。大丈夫だよ」とこちらも笑顔で返答しました。それにしても、『あっちのイチゴ』って、誰かイチゴを植えていたかな?と不思議に思っていましたが、「ああそうか、分かった」。答えは河川敷から伸びてきたバラ科の野イチゴ(ナワシロイチゴやヘビイチゴなど)でした。

 

 初夏を迎えた魚沼の里山は「野イチゴの季節」です。前述のバラ科の各種の野イチゴに加えて、桑の木の「クワイチゴ」も文字通り「たわわ」に実っています。個人的に一番美味しい野イチゴは、ブルーベリー色のクワイチゴ(クワ科のクワの木の実)ですが、食べると口元が紫に染まるのが難点と言えば難点ですね。そして思うのは「越後(新潟)の魚沼地方の里山は本当に植生が豊かで生産力が高い」という事。初夏の野イチゴや秋のアケビ、クリの実など、沢山の野生の果実があります。もちろんスーパーマーケットにある品種改良された栽培種の果実の味には遠く及びませんが。

 

 日当たりが良く豊富な降水量の条件にある魚沼地方の里山は、戦後の燃料革命により薪炭利用(伐採)されなくなった事から、「50年以上の間に森がどんどん成長し」「植物の種類も豊富で」「野生動物にとって大変魅力的な場所」に変化しているとも言えます。実際にフィールドで自然観察していると、ここ数年は標高1,000m前後の極相的なブナ林帯よりも標高400m前後の植生が多様な里山の方が「ツキノワグマのフィールドサイン(食痕や足跡)が多い(濃厚とも表現される)」印象があります。こうした魚沼地方の豊かな里山は柿の実などが実る人家の敷地にも接している訳で、魚沼地方でツキノワグマの目撃情報が数多く発生する背景ともなっているように思います。

 「開発行為のために奥山が荒廃したからクマが里に下りてくる」「山にはクマの食べ物が無い」というおなじみのフレーズも、魚沼地方についてはそろそろ考え直すタイミングなのかも知れないなあと、野イチゴの季節に思うのでした。