里山のツキノワグマ 30 〜自然観察の手法でツキノワグマの生態を追う意味〜

 今朝(2020.10.08)も里山エリア(エコミュージアム園内ではありません)の早朝定点観察を実施しました。守門アメダス観測的における最低気温は12.3度、24h雨量は7.5mmとなり冷たい雨がシトシトと降り続いています。

 

<雨が降り、行き交う人や車も無い里山エリアで、ツキノワグマは今どこで何をしているのでしょうか?>

<前日にツキノワグマの泥足の足跡が発見された場所ですが、クマは水田を横切り、川沿いのオニグルミ群落まで通っていたようです>

<ツキノワグマの出没が頻発する畑は耕作放棄され、立派な柿の木も藤蔓(ふじづる)と藪(やぶ)に呑まれてゆきます>

 

 本格的な野生動物調査としては、ハイテク機器を用いたセンサー式自動撮影カメラやバイオロギング(GPS座標記録装置による動物の行動記録調査)が有効です。一方で今朝のように雨が降り「野生動物の活性が低く」「フィールドサイン(生態痕跡)」が残りにくい場合、当方の「古典的な自然観察(ラインセンサス)法」は無為感がつのります。

 それでも、現在の自然観察的手法が有効と思われる場面はあります。現場を巡り現場に立つことで「動物の息遣いや気配、生物間のストーリー、周辺の状況」など「無数の圧倒的なアナログの情報を観察者自身に取り込むこと」が、「フィールドワークとしての古典的な自然観察法の利点」なのかも知れません。フィールドは情報の塊(かたまり)です。この手法は個々の個体のGPS座標や移動距離などの明確なデジタル情報やスマートな研究成果としては中々現れませんが、視野をぐっと広げて「ツキノワグマの視点」や「農家の方の視点」、あるいは「ツキノワグマを駆除する方の視点」「有害駆除に様々な意見を持つ方の視点」など、社会学の手法も用いつつ「地域全体を俯瞰して現状を探る試み」として「誰もが取り組める自然観察的手法によるツキノワグマの生態調査」をしばらく続けてゆきたいと思います

 冬期間も「里山のツキノワグマ」を調査し、可能であれば冬眠場所も探りたいと思います。興味深い調査結果が待っていそうです。

 

<この里山エリアでは天空の水田よりも標高の低い場所で「里山のツキノワグマ」が行動しています>

<人間にとっても、ツキノワグマにとっても、「この場所が令和時代の最前線」です>