里山のツキノワグマ 48 〜密集した屋敷林はクマの小宇宙 空き家は特に危険〜

 昨日(2020.10.22)も各地でツキノワグマの人里への出没と人身被害が発生しています。ニュース映像を見ると「密集した屋敷林」「空き家」「収穫されない柿の実」「若齢のツキノワグマ」等の要素が浮かび上がってきます。当ブログでも過去に言及していますが、本来の生息地であるブナ林帯からクマ社会のプレッシャーにより押し出された「若齢のクマ」や「親離れしたばかりのクマ」、「親子クマ」などが「人気(ひとけ)の少ない独立した屋敷林(家屋の周囲に樹木を配した宅地)」を「新たなエサ場(新天地)」として利用しているように思いますこの場合、屋敷林は「エサ場と隠れ場所を備えたツキノワグマの小宇宙」となります。またクマにとっては、ここを訪れた人間は「自分(クマ)のエサ場を荒らす侵入者に見える」のかも知れません。

 ところが、人間の側はこうしたツキノワグマの柔軟な空間利用(屋敷林のエサ場化)をなかなか認識できないため、特にツキノワグマの生息地や里山(今では県内の多くの里山がクマの生息地となっています)に隣接した「家主が不在の空き家」は、「クマによる人身被害が発生する危険性の高い場所」となりますまたこうした家屋の敷地に柿の木や栗の木が放置されている場合、危険性は更に高まります。猟友会の方の見立てでは、事故が発生した敷地内では数日前のツキノワグマのフンや爪痕も確認されていたようです。ツキノワグマが柿の木に登るときの爪跡や地面に残されたフンによって、その場所のツキノワグマの利用履歴が判断可能ですので、ツキノワグマの生息地に隣接する住民の方は、特にこうした生態痕跡(足跡、爪痕、食痕、フンなど)に御注意いただければと思います

 

<ツキノワグマが食害した柿の木は、枝が折れた独特の姿になります

<柿の木の樹皮は柔らかいため、クマの爪痕がしっかり残ります

<ツキノワグマのフンは、大型の犬のフンよりも太くて量もたっぷりあります

<ツキノワグマの足跡は、人間の大人の素足によく似た形(かかとを着けて歩く蹠行性)です>