里山のツキノワグマ 15 〜秋が深まり、市街地に接近するクマ〜 2020.09.23更新

 今日(2020.09.22)の新潟県魚沼地方は風も無く穏やかな朝を迎えています。守門アメダス観測点における最低気温は14度、日中の最高気温は25度と予想されています。連休最終日ですが、絶好の行楽日和になりそうです。

 さて、「里山のツキノワグマ」シリーズも15回となりました。毎朝の定点観察や行政機関が発表する目撃情報などを検証してゆくと日々新たな知見が生じます。ここ数日は秋雨前線の南下に伴い涼しい気候となっていますが、この気温低下が「ツキノワグマの行動圏を拡大させる食欲スイッチ」を作用させたようで、「ツキノワグマの行動圏が市街地付近にまで接近している様子」を、魚沼市役所のwebsiteから読み取ることができます。特に魚沼市の小出地域と湯之谷地域との境界にある「道の駅ゆのたに(深雪の里)」付近での情報に注意が必要です。この場所は鳴倉山(標高578m)の旧薪炭林の麓にあり、一級河川の佐梨川(河畔林が市街地まで点在)にも近い場所です。日中の交通量は多いものの、夕暮れから明け方にかけてツキノワグマが市街地の近くまで行動圏としている様子が「フンや足跡」の存在から推察されます特に「中小河川の河畔林あるいは河岸段丘際の雑木林と、半島状の里山(旧薪炭林)の突き出し地形の組み合わせ」が「市街地・住宅エリアへのツキノワグマの出没多発要素」となっています。

<標高750mにあるエコミュージアム園内に実るコナラのドングリとサルナシ>2020.09.21撮影

 

 一般に「ツキノワグマの住処を人間が奪った」とか「奥山にエサが無いからクマが人里に出没する」と説明されますが、魚沼市の市街地を貫流する佐梨川流域は「縄文時代から連綿と人々が生活していた場所」です。決してツキノワグマの基盤生息地ではありません。またこのブログで報告している通り、堅果類の豊凶の主要因のひとつは自然のサイクル(masting=マスティング、樹木による結実調整効果)に沿ったものですし、新潟県魚沼地方について言えば「奥山にも里山(旧薪炭林)にも様々なエサ資源が存在しています」。

 現在までの観察結果から、市街地付近へのツキノワグマの出没要因として「エリア全体でのツキノワグマの個体数増加」と「ツキノワグマの行動圏の拡大(人里に接した旧薪炭林の森の成長と連動、奥山と里山を往来)」、そして最も重要な要素として「人里に接している里山に(普段から)生息するツキノワグマの存在」に注目しています。

 

追記1:魚沼市広神地区の破間橋(あぶるまばし)の袂で2020.09.22の早朝5:00頃、ツキノワグマの目撃情報が寄せられています。この場所は広神中学校に近く小中学生の通学路にもなっています。中小河川(日付川や小黒川)の河畔林に沿って東地区の旧薪炭林(権現堂山系など)から移動してきたツキノワグマが一級河川である破間川の手前で行き場を失った形です。このクマは夕暮れを待って破間川の河畔林に沿って上流の平地山方面へ移動するものと思われます。広神地区の平地山山麓(へちやま、標高336m)付近は魚沼盆地(住宅地と農地が混在)に半島状に突き出た地形であるため、同様の地形条件を有する鳴倉山山麓(小出地区)、薬師山麓(湯之谷地区)とともに「頻繁に住宅エリアでツキノワグマが目撃されるポイント」となっています人身事故の防止が最優先です。一層の警戒が必要です

 

追記2:先日入広瀬地区の人里で捕獲(通学路や住宅地に連日出没・有害駆除許可済)されたツキノワグマは体長153cmであったとのこと。大変大きくて立派なクマです。新潟県魚沼地方の森林に豊富なエサ資源が存在することが大型個体(長寿命化)の背景にあるものと推察されます。

 

追記3:新たな情報として、2020.09.23の早朝5:15頃に魚沼市内岡新田(おかしんでん)地区でツキノワグマの個体目撃情報が寄せられています。またこの情報と関連して、一級河川魚野川の右岸付近で大型の野生鳥獣の足跡(ツキノワグマによるものと思われる)も発見されています。周囲には福祉施設や内水面水産試験場などがあり、最寄りの住宅から100m以内の場所です。人身事故の防止が最優先です。一層の警戒が必要です