里山のツキノワグマ 10 〜新しいポイントで小動物の骨片入りのフン〜

 昨日(2020.09.12)の午後、標高400mほどの里山にある県道敷で「ツキノワグマのフン」を発見しました。前後の気象条件から、当日の早朝以降に排出されたフンと思われます。それにしても今年はツキノワグマのフンを発見する機会が多くあります。もちろん好き好んでツキノワグマのフンを集めて回っている訳ではありませんが、「フンの内容物調査によってツキノワグマの食性が明らかになります」ので、新潟県魚沼地方のツキノワグマ大量出没の背景を探る意味でも、こうした機会は重要です

 

<今回見つかったツキノワグマのフンには大量の植物繊維とともに、小動物の骨片が入っていました>

 

 さて、早速このフンを洗浄してみますと「大量の植物繊維とともに茶色の骨片」が見つかりました。一見するとオニグルミの外殻に見えなくも無いですが、よく観察すると「ほ乳類の骨片」のようです。部位としては骨盤や肩甲骨のようにも思えますが、即断は出来ません(現在スタッフで検証中です)。また一緒に見つかった植物繊維ですが、葉柄が数多く含まれています。第一印象は「ヤマナラシ(ヤナギ科)」や「ウダイカンバ(カバノキ科)」のようにも見えますが、ほとんど原型を留めていないため、現段階では種名不明です。フンの中にあったのですが、微かに芳香がしますので(これまた微妙な表現ですね!)カツラ(桂)の木の可能性もあります。

 さて、前述の骨片ですが、このフンには体毛が見つかっていませんので、この骨片のストーリーとしては「キツネやテンに狩られたウサギなどの小動物の遺骸が積雪や雪解け水で下流に流され、沢筋に流れ着いたところでツキノワグマが見つけた」、あるいは「イヌワシやクマタカがエサにした小動物が巣から廃棄され、その後ツキノワグマがこの遺骸を食害した」という風にイメージしています。日本列島の自然環境に適応したツキノワグマは「ドングリやオニグルミ、毛虫入りの葉っぱ、そして腐肉も食べる雑食性の大型ほ乳類です」。今回見つかったフンに含まれている小動物の骨片も、こうしたツキノワグマの食性を探る重要な手掛かりとなります。

 

<今朝の定点観察では、ロードキル(交通事故死)のタヌキや、ニホンザルの親子連れも観察されました>

<ツキノワグマは雑食性ですので、ロードキルによる動物の遺骸を食害している可能性もあります>

 

 そして、今シーズン見つかるツキノワグマのフンはどれも大変立派なフンです(この地域はエサ資源に恵まれているとも言えそうです)。一般には「人間が奥山を開発し、ツキノワグマの住処(すみか)を奪ったからクマが人里に降りてくる」とか、「人間が山を荒らし、山にエサが無いからクマが人里に降りてくる」などとよく説明されますが、実際にフィールドで調査した結果はむしろ逆で、「ツキノワグマは想像以上に豊かな食性を持っていて、(新潟県魚沼地方では)奥山から里山まで広く分布している”ありふれた動物”」という印象が益々強くなってゆきます。