雪代(ゆきしろ)が運ぶもの 〜日本海のプランクトン・イワシ・マダイとの関係を考察〜

 記録的な暖冬少雪となった2019-2020年の新潟県ですが、その影響はどこまで広がっているのでしょうか。先日、所用で新潟県営柏崎マリーナまで行く機会があり沿岸の様子を観察してきました。6月中旬という事もあり、海面にはホンダワラなどの流れ藻も多少見られるのですが、海水の透明度が高く何匹もの「トビウオ」が元気良く波間を滑空(50メートルくらい空中を飛びます!)してダイブします。真っ青なまさに夏の海・夏の潮色という印象です。そしてマリーナの利用者の方に伺うと「今年の春はマダイがあまり釣れない」との事。海は凄く綺麗なのですが、今年の日本海(柏崎沖)は何か平年とは違う条件なのでしょうか。

 そこで「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」の気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)による「クロロフィルa濃度(植物性プランクトンの資源量を示唆、日本時間で2020年6月23日午前10時頃)のデータ画像」を見てみます(クリックで拡大表示されます)。

 この画像では日本列島の中央部のシルエットとともに、日本海沿岸の海岸線や能登半島、佐渡の輪郭が分かります。そして「クロロフィルa濃度」は青から緑色、そして赤色へのグラデーションとして表現されています。大阪湾や伊勢湾に赤色部分(クロロフィルa濃度が高い)があるのは人口密集地帯からの栄養塩類に起因しているのでしょうか。一方で日本海側に目を転じると富山湾や直江津沖、大河津分水沖、信濃川・阿賀野川沖、男鹿半島周辺沖などに黄色や緑色の部分が見えます。これらは「それぞれの県を代表するような主要河川から海への栄養塩類の供給」に起因しているようにも思えます。

 浅草山麓エコ・ミュージアムのある越後山脈(新潟県側)に降った雪は、春から初夏にかけて雪代(ゆきしろ・雪解け水)となり、田畑を潤し、日本一の大河である信濃川として最終的には日本海まで到達します。そして雪代は様々な有機物や土砂、栄養塩類などを陸から海まで運ぶ役割も果たしています。冷たい大量の雪解け水は海水の循環を促し、春の日差しと栄養塩類(深層や陸上からも供給される)などによって植物プランクトンの大量発生(ブルーム)のサイクルをもたらします。2019-2020年の冬に記録的な暖冬少雪となったことで、仮に雪代が大きく減少したとすると、その影響は日本海とそこに発生する植物性・動物性プランクトン、更にはこれらを捕食するイワシやマダイの漁獲にまで及んでいるのでしょうか?

 「河川水とプランクトンと漁獲量の関係」は「オホーツク海沿岸や気仙沼湾での調査」で知られていますが、「積雪量と雪代、そして日本海の生物への影響」についても考察を続けてゆきたいと思います。

 

<画像の使用について>

 本ページの画像は「宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供」です。

また衛星画像による海洋植物プランクトンの春季大増殖の分析などは

JAXAのこちらのページを参考といたしました。

https://www.eorc.jaxa.jp/earthview/2004/tp040108.html

提供:(c) 宇宙航空研究開発機構