アユ(鮎) 〜川の自然観察を堪能する夏〜

 今日(R02.06.29)の新潟県魚沼地方は小雨模様の天候となっています。守門アメダス観測点における最低気温は17.1度、日中の最高気温は24度と予想されています。梅雨寒のフィールドでは薄手の長袖を一枚御用意下さい。

 さて、新潟県内の一部の河川では鮎釣りが解禁されました。今後7月上旬から8月上旬にかけて、新潟県内の各水系の漁協ごとに設定した解禁日を次々迎えることとなります。そして新潟県の清流を代表する淡水魚とも言える鮎(アユ)ですが、アユを釣るための「日本発祥の独特な方法」として「友釣り」が知られています。これは「約1メートル四方のナワバリ(排他的なエサ場)を形成するアユの生態」を利用した釣り方です。ナワバリを形成したアユは、川底の石に生育する珪藻類(※)を独占的に採食しようと、その場所に入ってくる他のアユを威嚇しながら追い出し、その際に相手に体当たりする習性があります。そこで、オトリにするアユに「イカリ型の掛け針」を付けることで、体当たりしてくるナワバリの主であるアユを引っ掛けて釣る方法(友釣り)が考え出されました。このため、友釣りでアユが釣れた際には「二匹のアユ(オトリアユとナワバリアユ)が釣り糸の先にいる状態」となります。実際にはこの二匹のアユは友達ではありませんが、これを友(とも)と表現するのは、清流に棲む美しい淡水魚であるアユに対する「人々の憧れや慈しみの気持ちの現れ」なのかも知れません。

 アユには人間の言葉は通じませんので、このオトリにするアユを「釣竿の操作で如何に上手にナワバリの主のアユに誘導・接近させ」、「ナワバリアユによる体当たりを誘発させるか」が釣果を左右します。友釣りの上手な方は川の自然観察の達人だと思います。アユの習性はもちろん、川のどんな場所にアユが多くいて、ナワバリを持ったアユをいかに見つけるか、その作戦のもととなる「アユの気持ちになっての川見(かわみ)」は正に実践的な自然観察です。

 炭素繊維を使用した軽量な釣り竿や極細金属製の釣り糸、繊細な編み付け技法を用いた釣りの仕掛けの工夫など、日本の河川環境と伝統漁法、先進的な産業素材・製造技術、そしてアユの生態解明への情熱が夏の風物詩でもある日本の鮎釣りを形成してきました。

 夕方の時間帯、深い淵の上流にある瀬(水深が浅く、流れがある場所)にアユの群れが移動し、一斉に川底の石の表面の珪藻を採食しています。夕日を受けてギランギランと体表を光らせて珪藻を食(は)むアユの様子は、まさに「アユが見せる綾模様の煌めき」です。新潟の河川に天然遡上のアユがたくさん生息し、これを間近で観察出来るのは、山から海まで河川が連続している新潟の自然環境の賜物だと思います。

 

※ アユ釣り師の皆さんは慣習として、この珪藻類のことを「コケ(苔)」や「アカ(垢)」と表現しますが、自然観察の場面では生物分類のセオリーに従って「珪藻類」あるいは「付着性藻類」と解説したいと思います。