里山のツキノワグマ 61 〜怪我をしているニホンザルはクマの食事跡を利用〜

 今朝(2020.11.03)も里山エリア(エコミュージアム園内ではありません)の定点観察を実施しました。昨日からの雨も午前中で止みそうですが、新潟県魚沼地方は晩秋の時雨模様です。

 

<今朝はツキノワグマの新しいフンは発見できませんでした。インジケーターの柿の木にも異常なし。冬籠りに向けて、ツキノワグマは移動を開始したのでしょうか?>

<この里山エリアに初雪が降れば、野生動物の行動追跡(トラッキング)は俄然明瞭になります>

<この調査区内の田んぼの畦には、ホンドタヌキの溜めフンがありました>

 

 さて、昨日(2020.11.02)のことですが、入広瀬地区の五味沢エリアで単独行動をとるニホンザルのオス一頭(離れザル?)を発見しました。一見毛並みも体格も立派ですが、その個体はどうも右後ろ足を痛めているようで、走る事はせず、痛そうな片足を引き摺るようにゆっくりと道路上を移動していました。オスのニホンザルは「母系集団を中心とする群れ」に出入りを繰り返すようですが、「ニホンザルの群れとの遭遇に関係するオス同士の闘争」で足を痛めてしまったのでしょうか?

 

 

 上記の写真を撮影する前には、このニホンザルは道路脇にあるクリの木の下で採餌行動をとっていました。この場所は例年、周囲のブナ自然林帯からツキノワグマが訪れ、一番美味しい時期のクリの実を採食する場所です。地面にはツキノワグマが一通り採食した後の「残り物のクリの実(当地で”シイナ”と呼ばれる痩せたクリの実)」しかありません「後ろ足を痛めているこのオスザル」は恐らく「冬を前にして、地面の上でしか採食行動をとれない」のでしょう。野生動物の世界の厳しさを垣間見た瞬間です

 

 新潟県魚沼地方では、奥山にも里山にも様々な種類の野生動物が生息しています。そして野生動物の世界は、時にエサ資源をめぐって争奪状態にもなります。

「山にエサが無いからクマが人里に出てくる」

「実のなる木を奥山にたくさん植えればクマは人里に出てこないのでは?」

という言説が一部にはありますが、ツキノワグマとニホンザルとは樹林環境において、そのニッチ(生態学的位置付け・樹上での採食行動)が重複しています。こうした意味に於いても「奥山への果樹等の植栽」は「他の種類の動物(例えばニホンザル)への給餌」とも成り得ますので、地域での合意形成と獣害を未然に防ぐ方策の確保等、専門家による慎重な判断が欠かせません。