里山のツキノワグマ 107  〜この夏もツキノワグマはフクラスズメの幼虫を食べるのか?〜

 今日(2021.07.30)の新潟県魚沼地方は夕立の後の爽やかな朝を迎えています。守門アメダス観測点における最低気温は20.1度、日中の最高気温は31度と予想されています。適度な降雨は作物にも森の生き物にも必要ですが、降りすぎにならないように願います。

<左:ヤマアジアイの涼しげな淡い青色 右上:雨の後にはカタツムリも登場>

 

 さて、昨日(2021.07.29)のことですが、魚沼市大白川地区を通る県道385号線の標高600m付近で「ツキノワグマのフンらしきもの」と「イラクサ科の葉(アカソなど)を食害する多数のフクラスズメの幼虫」を発見しました。フクラスズメは三角形の羽をもつ中型の地味な蛾ですが、その幼虫は赤と黒の模様が毒々しく「いかにもボクは蛾の幼虫です」「食べないほうが良いよ」という雰囲気を醸し出しています。昨年の調査では当地(新潟県魚沼地方)のツキノワグマは「イラクサとフクラスズメの幼虫を一緒に摂食すること(2020.09.05)」が確認されていますが、気がつくとこの場所にも「ツキノワグマのフンらしきもの(夕立の強雨のため形が崩れています)」が残されています。

 都市部にお住まいの方の中には「ツキノワグマの主食はドングリ」「ドングリの不作でツキノワグマは飢餓状態」「人間による開発行為のためツキノワグマは絶滅寸前」という認識の方もおられるかも知れませんが、当方の調査では当地のツキノワグマはドングリだけではなく、ミズバショウやイラクサ、アケビの実やオニグルミなど、ドングリ以外の餌資源も幅広く積極的に摂食しています。また魚沼市が公表しているツキノワグマの出没情報でも明らかなように、親子連れのツキノワグマ」や「独り立ちしたばかりの若いツキノワグマの個体」が里山エリアでも頻繁に目撃されるなど、ツキノワグマの繁殖生理(餌資源が十分無いと受精卵が着床・成長しない)からみて「当地(新潟県魚沼地方)のツキノワグマの栄養状態と繁殖状況は悪くありません」

 ツキノワグマにとって「イラクサとフクラスズメの幼虫のセットメニュー」は「日当たりの良い林道や沢筋にたくさん存在する」「タンパク質と脂質、食物繊維のバランスに優れた餌資源」なのかもしれませんねまたイラクサ科の植物は山菜としても利用されますが、その資源量は膨大ですので「ツキノワグマと人間とが山菜(イラクサ科の植物)をめぐって取り合いになる」という事もなさそうです。百聞は一見に如かず。新潟県魚沼地方をフィールドとした自然観察は発見の連続です。

<左上:派手なフクラスズメの幼虫 右上:スズメガの幼虫はイラクサ科の群落を広く食害>

<左下:イラクサの近くには大きな動物のフン 右下:ツキノワグマのフンのようにも見えます>