里山のツキノワグマ 112 〜今期初のクマのフンはオニグルミの殻入り、昨年同様の経過を辿るか?〜

 今日(2021.09.07)の新潟県魚沼地方は爽やかな秋の空気に包まれています。守門アメダス観測点における最低気温は13.4度、日中の最高気温は29度と予想されています。近場の田んぼでも早生(わせ)品種の稲刈りが盛んですが、いよいよコシヒカリの刈り取りも最盛期を迎えることでしょう。

<左上:秋を彩るツリフネソウの季節になりました 右上:香りが独特なアブラチャンの丸い実>

<左下:里山では結構コナラのドングリが実っています 右下:アケビも良く見かけます>

 

 さてそんな清々しい話題の一方で、この秋の冷え込みによりツキノワグマの食欲のスイッチ(冬眠前の集中摂食行動)が入ったようで、当方の定点観察地点(エコミュージアム園内ではありません)とは別の場所ですが、この日曜日(2021.09.05)に早速ツキノワグマのフンを発見したとの情報が入りました。現場に向かってみると「存在感たっぷりの見事なツキノワグマのフン」が残されています。

<左上:フンの発見場所の横にはオニグルミの木 右上:クマはおそらく夜間に行動>

<左下:目立つ位置にあるクマのフンはナワバリの目印? 右下:オニグルミの殻が目立ちます>

 

 この場所は以前から御紹介している「クマの故郷・守門岳山系藤平山(ふじびろやま)」の山裾の道路で、周囲にはオニグルミの群落が藤平山から集落まで川沿いに延々と続いています(=餌場の回廊・コリドール)。そして通報のあったツキノワグマのフンの内容物を観察すると、オニグルミの殻が大変良く目立ちます。その他の内容物としては(種類は分かりませんが)恐らくミズキやヤブデマリなどの小さめの木の実の種が含まれています

 一般的には「山に餌が無いからクマが人里に下りてくる」と言われますが、実際にツキノワグマのフンを検分すると「人里近くの旧薪炭林(里山)や河畔林にある豊富な餌資源がツキノワグマを強力に誘引している」との印象を益々強くします。新潟県魚沼地方の場合、この守門岳周辺もそうですが「奥山(薪炭林として伐採されなかったエリア)はブナの天然林が広がっており」また山頂から中腹にかけては「国定公園や県立自然公園に指定されるなど自然環境が適切に保全されています」。

 それでも近年ツキノワグマの人里への出没が相次いでいるとすれば、それは「奥山が開発行為によって荒廃したからではなく」、むしろ「旧薪炭林(里山)」を中心としてツキノワグマの餌資源(一種のバイオマスとも表現可能)が人里近くで年々増加しているためであると当方では考えています

 ツキノワグマのフンは「寡黙にして雄弁」です。こんなに立派なフンを残していったクマは「お腹いっぱいオニグルミを食べて、日々皮下脂肪として蓄えてゆくことでしょう」。当地のツキノワグマについて言えば「フンを検分する限り餌不足ではありません」。

 そしてこの先も当地のツキノワグマがオニグルミやアケビ、シバグリなどを積極的に摂食するとすれば、新潟県魚沼地方では昨年同様に人里近くでクマの出没が相次ぐ事態も想定されます。特に早朝や夕方の「クルミ拾い」の際には、ツキノワグマとの不意の遭遇に十分御注意下さい。